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『江戸にラクダがやって来た―日本人と異国・自国の形象
 四六判376頁 図版69点 税込価格3190円(本体2900円+税)
 岩波書店の紹介ページへ  同 試し読みのページ

 『日本経済新聞』2022年11月12日朝刊に書評紹介が掲載
  サーカス学会会長で漂流史研究の大島幹雄さんが書評紹介
 「見世物興行年表」サイトを運営する樋口保美さんが書評紹介
 『大道芸アジア月報』に上島敏昭さんが書評紹介(リンク先3頁目)
    新宿書房社長の村山恒夫さんが上記月報を引用再掲し紹介
 『週刊現代』2022年11月5日号に動物学者の今泉忠明さんが書評紹介
 『AERA』2022年12月19日号に作家・写真家の星野博美さんが書評紹介
  小説家で朝日時代小説大賞受賞の木村忠啓さんが書評紹介(ベスト3の2つ目)
  寺島実郎の世界を知る力 TokyoMX 2023年2/26放送で紹介(10分17秒辺)
 『文芸年鑑2023』の概観欄で近世文学の佐藤至子さんが昨年成果として紹介
 木下直之さんが文化資源学会『文化資源学』22号 (2024)で有難いロング書評


「異国の珍獣」ラクダの旅路を追う
大阪でも名古屋でも各地で見世物は大評判。
ラクダを通した人びとの異国認識を探る表題作ほか
日本人と異国・自国をめぐる全五章。………本書オビのコピー文章より

ラクダをめぐる第一章が、注などを含めると220頁ほどあって
全体の6割強を占めます。その意味で文字通り表題作ですが、
サブタイトルの「日本人と異国・自国の形象」が本書全体のテーマで、
江戸時代後期から近代にかけて、日本人が異国と自国をどのように認識し、
異国と自国をどのように具体的に形象化してきたのかを、
私ならではのやや変わった素材と切り口で全五章で考察しています。………川添コメント


[目次]

第一章 江戸にラクダがやって来た……1
 一 江戸はラクダで大騒ぎ
      どのようにラクダと接したか / 到着地、板橋へも人が殺到
      紀州藩主と平戸藩主の明暗 / 迎賓館赤坂離宮と赤坂御用地
      感染症流行の時代 / 絶妙のタイミング
      ラクダから逃げ出す疫病神/元気な十方庵の記録からわかること
      「ラクダ現象」の広がり
      『武江年表』の誤りと、資料の扱いについて
 二 長崎舶来から江戸に至るまで
      長崎にとどまり続けるラクダ/ラクダの情報で遊ぶ江戸の狂歌師たち
      ラクダが出島を去るまで / 大坂にラクダがやって来た
      大坂の唐物屋が売り出していたラクダ絵図
      なかなか始まらない難波新地の見世物
      大坂でも大当たり / 大坂から京へ
      ラクダを描く画家たち / 雌雄仲むつまじいラクダは「夫婦」に
      流行唄のラクダは「よれつもつれつ夫婦連れ」
      「土瓶の鋳掛」から「駱駝」へ
      文人たちの「仲よしラクダ現象」—頼山陽と梁川星巌
      さらに語られ、描かれるラクダ
      伊勢を経て、中山道から江戸へ / ラクダは「紀州様の荷」
 三 『駱駝之図』を読む
      絵柄を読む / 唐人姿の男たち
      口上記文を読む / 中国的認識枠と西洋知識
      ラクダのコブはむずかしい
      「天竺カテゴリー」とハルシヤ、アラビア
      誇張されるラクダの能力 / 盛りだくさんの「ご利益」
      ラクダと七福神とのコラボ /『和合駱駝之世界』
      ラクダ研究書の世界 / 1 堤它山『槖駝考』
      2 大槻玄沢『槖駝訳説』/ 3 松本胤親『槖駝纂説』
      4 山崎美成『駝薈』/ 江戸の「ラクダ現象」をめぐって
 四 ラクダの旅路
      水海道でのトラブル、そして八王子、大田原(文政八年)
      金沢、鯖江を経て名古屋へと向かう(文政九年)
      ついに名古屋にラクダがやって来た(文政九年十一月)
      『絵本駱駝具誌』が再現する世界
      二度目はうまくいかず備前から徳島へ(文政十年)
      中国地方をめぐる旅—広島、岩国、天神渡、津山(文政十一年)
      謎の空白を経て若狭小浜に(天保三年)
       江戸再来と信州飯田(天保四年)
      ラクダの行方 / ラクダの到来と異国・自国の形象
 五 落語『らくだ』の時代
      落語『らくだ』の概要 / ラクダ見世物と「かんかんのう」
      同時代文化が交響する落語 /『らくだ』のパフォーマンス

第二章 舶来動物と見世物……197
 一 動物舶来の歴史
      古代の動向 / クジャクとオウム / 舶来動物と「ご利益」
      中世の動向 / 朝鮮のタカ
      近世の動向 / 多数を占める鳥類 / かぎられた享受者たち
 二 舶来動物の見世物
      見世物の揺籃期
      商業化が進んだ江戸時代後期
 三 そこで何が起こっているのか
      珍しい動物の「ご利益」/ 生餌の演出
      勢州松坂 鳥屋熊吉 / 議論の行方

第三章 開国期における異国・自国の形象……229
 一 異国船はやって来る
      オランダと中国が混淆する異国船
      「来航する」という形式
 二 ペリー来航と日米のレプリゼンテーション
      西洋世界の地球的拡大とペリーの「砲艦外交」
      日米のレプリゼンテーション
 三 不気味な異国人物、そして「神風」「神国」
      異形の異国人物たち /「神風」が異国船を吹き戻す
      非対称性の別次元からの解消
      「神国」では異国のトラも日本語を覚える /「神風」の遊廓

第四章 日本人になってみる、日本をやってみる
             —身体が形象するジャポニスム……257

 一 日本人になってみる
      あたしたち日本人になっちゃった
      「日本人になってみるコスプレ」の系譜
 二 日本をやってみる—「茶店・茶屋」と「茶屋の娘」たち
      プラハのYOKOHAMA
      チェコのジャポニスムを牽引したホロウハ
 三 ホロウハの行動的ジャポニスム
      『嵐のなかのサクラ』と最初の日本滞在
      二十代後半での「茶店・茶屋」の実現
      『日本の子どもの昔ばなし』
 四 「実物の日本人」と出会う
      日本の軽業曲芸師たち
 五 ジャポニスムの源泉としての軽業曲芸師
      最初の旅券の集団
      「子どもたちは例の日本人を見てきた」
 六 「芸者」と「ゲイシャ」の相乗
      万国博覧会と「日本村」
      オペレッタ『ゲイシャ』に烏森芸者が出演
      ドレスデンの芸者とプラハの「茶屋の娘」たち

第五章 横浜が売る「ニッポン」—サムライ商会を中心に……291
 一 サムライ商会の「ニッポン」
      強烈な日本趣味の外観
      骨董と美術工芸品の製造—サムライ商会の内部から
      日本趣味のシルバーウェア
      再創造・再生産される「ニッポン」
 二 野村洋三をめぐる人びと—獅子文六、そして新渡戸稲造と鈴木大拙
      作家、獅子文六の父親のシルク・ストア
      新渡戸稲造の武士道に呼応して / 鈴木大拙との交流
      BushidoとZenの背後にあるもの

注……315
主要参考資料……343
あとがき……359