川添 裕
Yu Kawazoe
Waves on the Net 5
Webzineの現在
Webzine(ウェブジーン)という言葉をご存じだろうか.
これはWorld Wide WebのWebと,Magazineのzineの合成語で,簡単にいえばウェブ形式の雑誌,いわゆるホームページの形式で発行されるオンライン雑誌,オンラインジャーナルを総称したものである.
ウェブがインターネット上の新しいコミュニケーション手段として登場し,ひとつのメディアとして確立していけば,そこに英語でいうところの一種のJournalやPeriodicalが発行されるようになるのは当然のことで,メーリングリストやニュースグループと並び,インターネットの初期から学術利用などでこうした試みはおこなわれていた.
そしてインターネットが一般利用・商業利用へと発展していくなかで,日本でも多くの個人による,趣味情報,エンタテイメント情報,タウン情報,私的ジャーナリズム,草の根ニュース,文芸ジャーナル、評論ジャーナル等々のホームページが,定期刊行物の形態であらわれてきた.既成のマスコミも,新聞や雑誌のオンライン版をウェブにのせるようになり,朝・毎・読・日経の4大紙はもちろん,地方紙を含むほぼすべての新聞がオンライン版を提供し,共同通信のように15分おきにニュースを更新するサイトさえあらわれている.
便利なZINE-CLIP
こうしたWebzineの内容をまず大づかみにしたい人にお奨めなのが,綱島信雄氏が運営するZINE-CLIP(ジーンクリップ)というサイトで,これは日本の主なWebzine180誌以上のデータをサーチして,それらを目次風にCLIP(切り抜き)する形でまとめた,いわばWebzineについてのWebzineである.創刊は1996年11月15日.日刊の発行で1998年3月20日時点で490号をかぞえている。
例えば今年はじめの1月10日から12日までの3日間の号には,「森下一仁のSFガイド」「徹子の部屋」「湘南ビーチFM」「BEAT UK」「岡田斗司夫のおたくWeekly」「バンクーバー新報」「ライブ アジア」「みんなで見つける自然通信」ほか52誌の最新情報がクリップされている.「Web新潮」(新潮社)や「INTERNET Watch」「PC Watch」(インプレス)のような出版社提供のものもクリップされ,このOpen Japan-World Netの更新情報も,「カフェ・クレオール」や「や、これは便利だ」を中心に定期的に収録されている.いずれにしても目配りのよい便利なサイトである.
個人ジャーナルとマスコミの健全な併存
筆者には,既成のマスコミ・ウェブと,個人ジャーナルや草の根ジャーナルとが並立するこうした状況は,互いが互いの欠を補う,きわめて健全な状況に思える.いわゆるマスコミが,組織力や歴史的蓄積,「情報の信頼性」で仮に優るとしても,それすらもいったんはone of themとして並列化する奥深さが,もしかするとインターネットにはあるのではなかろうか.
今後Webzineがどう展開していくのか? その主戦場からは目が離せない.
最終更新=Sun, 19-July-1998、初稿=Tu, 13-Jan-1998
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