メディア論 I、II
―川添裕:皇學館大学 平成21年度(2009)
メディア論 身体性 反メディア メディア社会 コミュニケーション史 メディア史 川添裕 古谷祐司 皇学館大学 コミュニケーション学科
20世紀に発達した種々のテクノロジーメディア、複製メディアの展開を一方で押さえつつ、他方で、人類史とともにあるメディアとしての身体、五感、夢、記憶を意識的に再考する。それは「記憶や心性の集合」としての歴史の理解でもあり、結局のところ文化理解、文化批評の問題につながっていく。その意味で、ここ四半世紀ほどにわたる「文化の学」の諸成果をも視野に入れながら、表層的な「情報」や近現代のマスメディアの限定枠を見はるかし、文化の深層へと迫るメディア論を展開していきたいと思う。
具体的な授業の方法としては、教科書に指定した著作(『見世物探偵が行く』晶文社、2003)をはじめ、文化人類学者で文化批評家の今福龍太氏の論考や、身体論、日本文化論の著述で知られる戸井田道三氏のエッセイの読解などをおこない、ともにメディアの意味を考えていきたい。
春学期分が「メディア論 I」、秋学期分が「メディア論 II」となる。コミュニケーション学科は I、II とも必修科目。他学科の学生も、なるべく継続して I、II を履修するよう推奨する。それぞれへの時間配分は等分ではないが、およそ以下のテーマで、メディア論の授業をおこなう(講義内容は若干、変更になる場合がある)。
到達目標は、メディア論 I がいわばメディア原論としての「メディアとしての身体」と「映像メディア」の理解、メディア論 II がグローバル化する消費社会、ハイパー資本主義社会における「ことば・モノ・距離」の理解であり、とくにキャラクターやネット社会を具体例にそのプラス・マイナスをよく理解してもらうことである。
[春学期=メディア論 I ]
1 進め方について
2 mediaということば
3 メディアとしての身体
4 中国雑技をめぐって
5 ジョルジュ・ドンの身体
6 五感の力
7 忘れの構造
8 身体力の復権
9 映像メディアの現代
10 写真は「真を写す」か
11 コードのないメッセージ
12 映像のポリティックス
13 予備(または復習)
14 《授業内レポート》
15 まとめ
[秋学期=メディア論 II ]
1 進め方について
2 世界の言語状況
3 「変な英語」のすすめ
4 古舘伊知郎のしゃべり
5 ことば遊びの意味論
6 メディアとしての動物キャラクター1
7 メディアとしての動物キャラクター2
8 メディアとしての動物キャラクター3
9 メディアとしての動物キャラクター4
10 メディアとしての動物キャラクター5
11 ネットは何を変えたか
12 ケータイをめぐって――メディアと「距離」
13 予備(または復習)
14 《授業内レポート》
15 まとめ
※下記は折にふれてとりあげる話題だが、時間に余裕があれば1回分を使ってさらに話をするかもしれない。
・現代の移動性とスピード
・時空間の断片化
・求心的な時空間としての文化、記憶の継承
教科書:川添裕『見世物探偵が行く』(晶文社、2003) ※また、随時プリントを配布する。
特記事項:身体とメディアを核にして考えていくので、あわせて「芸能論(芸能史)」の履修をすすめる。
参考事項:調べもの全般に便利なネット資源を、こちらの Editor's レファレンスへ川添なりにまとめてあります。
おすすめの主要参考文献12点 (プラス川添の関連書、エッセイ。書籍はなるべく新しい版で記す)
1 ヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術』(晶文社クラシックス、1999)
2 マーシャル・マクルーハン『メディア論――人間の拡張の諸相』(みすず書房、1987)
3 ウォルター・J・オング『声の文化と文字の文化』(藤原書店、1991)
4 吉見俊哉『メディア文化論――メディアを学ぶ人のための15話』(有斐閣、2004)
5 戸井田道三『忘れの構造』(ちくま文庫、1987)
6 金子光晴『金子光晴詩集』(岩波文庫、1991。とくに『女たちへのエレジー』『愛情 69』および拾遺詩篇)
7 オクタビオ・パス『大いなる文法学者の猿』(新潮社、1977)
8 ミハイール・バフチーン『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』(せりか書房、1995)
9 エドワード・サイード『オリエンタリズム』上下(平凡社ライブラリー、1993)
10 今福龍太『クレオール主義』(ちくま学芸文庫、2003)
11 『コミュニケーション事典』(平凡社、1988)
12 『コミュニケーション力とは何だろう』(皇學館大学出版部、2008)
川添裕「『コミュニケーション事典』の発想」(関連する気軽な文章)
川添裕「『新しい世界文学』シリーズ 読者へのメッセージ」(関連する気軽な文章)
川添裕「ギネスの街」(関連する気軽な文章)
川添裕『見世物探偵が行く』(晶文社、2003)