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見世物を考えるための統計データ

川添裕(1999年6月13日、第36回芸能史研究会大会・発表資料から)


今回の第36回芸能史研究会大会(大会テーマ:絵画と芸能史研究)では、 見世物絵を素材に近世後期の見世物のあり方と「見世物観」を捉え直してみようと思っています。 題して「見世物の実相とその享受−見世物絵を素材として」で、 昨年の国際浮世絵学会創立大会でおこなった発表「見世物絵とその出版の諸相」と対をなすものです。 川添の発表は三つのパートに分かれ、個別に「見世物絵を読む」事例も紹介しますが、ひとつのパートでは、 朝倉無声収集の『観物画譜』(228点)と川添コレクション既整理分(257点)の合計485点を 統計的に処理してみました。以下に二つのグラフを公開しておきます。

細工見世物が圧倒的に多いことがまず目立つ点で、これは日本の見世物の大きな特徴です。 また、細工・曲芸・動物で9割以上で、 「グロテスク、おどろおどろしい、因果物、ど迫力」といった紋切型の表現で 後世しばしば語られるもの(グラフの分類では「人間」)が、現実にはごくわずかしかないことが明瞭にわかります。 これは随筆・記録を中心的な資料とした川添「江戸見世物主要興行年表」(二百数十興行を収録、1991)でも、ほぼ同じ結果でした。

近現代のいびつにおとしめられた思いこみの見世物観や歪んだ神話から、自分の趣味や都合に合わせて勝手に考えるのではなく、 もう一度きちんと事実を見直して、見世物のずっと大きな「山脈」を掘り起こす必要があると思っています。 これをどう考えるかについては、下記の「見世物は何処へいく」なども参考にしてください。
(詳しくは1999年6月13日、京都市左京区吉田河原町・京大会館の発表の場で。1999年6月10日記)。

 

この発表はその後、
「見世物をどう理解するか―近世後期の興行件数と見世物絵から」 (『藝能史研究 148』、芸能史研究会、2000)として刊行されています。


 


 

  


 


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