見世物を考えるための統計データ
川添裕(1999年6月13日、第36回芸能史研究会大会・発表資料から)
細工見世物が圧倒的に多いことがまず目立つ点で、これは日本の見世物の大きな特徴です。
また、細工・曲芸・動物で9割以上で、
「グロテスク、おどろおどろしい、因果物、ど迫力」といった紋切型の表現で
後世しばしば語られるもの(グラフの分類では「人間」)が、現実にはごくわずかしかないことが明瞭にわかります。
これは随筆・記録を中心的な資料とした川添「江戸見世物主要興行年表」(二百数十興行を収録、1991)でも、ほぼ同じ結果でした。
近現代のいびつにおとしめられた思いこみの見世物観や歪んだ神話から、自分の趣味や都合に合わせて勝手に考えるのではなく、
もう一度きちんと事実を見直して、見世物のずっと大きな「山脈」を掘り起こす必要があると思っています。
これをどう考えるかについては、下記の「見世物は何処へいく」なども参考にしてください。
(詳しくは1999年6月13日、京都市左京区吉田河原町・京大会館の発表の場で。1999年6月10日記)。
この発表はその後、
「見世物をどう理解するか―近世後期の興行件数と見世物絵から」
(『藝能史研究 148』、芸能史研究会、2000)として刊行されています。